国鉄・天王寺駅の中央出口を出て、コンコースを右に折れて数メートル、地下鉄・谷町線へ通じる階段を下りた地下街、アベノ地下センターの始まり地点のちょっと手前、いうなれば中階といったあたりに小さな映画館があった。
もちろん国鉄とは現JRのことで、地下鉄とは大阪市営地下鉄、現大阪メトロのこと。
そして、劇場名は「天王寺ステーションシネマ」という。
洋画の三番館・四番間というか、いわゆる「名画座」にカテゴライズされるのだろうか、私が通っていた頃は、洋画1本立て興行で、あっ、今こんなんやってるやん! 観て帰ろォ!ーーとは、なかなかゆかないが、まあ気軽に入れる館だった。
席数が少ないから、いつも混んでる状態で、ヒット作だったら立ち観も当たり前だった。
観た作品、いっぱいあるのできちんとは覚えていないが、カルトSFの誉れ高いジェーン・フォンダ主演の『バーバレラ』はここで観たはず。
サム・ペキンパーに入れ込んでいた頃だから『ゲッタウェイ』や『コンボイ』もここだったかもしれない……し、違うかもしれない(笑)…自分がメモ魔でなかったこと、悔やんでも仕方ない(笑)

映画館のデータベースサイト『消えた映画館の記憶』によれば「天王寺ステーションシネマ」、開館は1962年9月21日、閉館年は2001年とある。
国鉄天王寺駅が現在の姿に近いターミナルビル「天王寺ステーションビル」、小さいながらもデパートやホテルのある立派な駅になったのが1962年のことだから、いわば「新天王寺駅整備計画」の一環として「ステーションシネマ」も作られたんだろうね。
また同記事には、「1964年の映画館名簿では、経営者は近畿日本鉄道、定員228席、ニュース映画を上映とあり、2001年の映画館名簿では、定員128席、東映(作品)を上映」と紹介されている。
時代にあわせて座席サイズや編成を変更したりしていたんだね。
それにしても気になる“ニュース映画を上映”という記述。
さらに末尾には「国鉄天王寺駅地下1階。大阪唯一のスーパーニュース劇場である。鉄骨鉄筋コンクリート造、冷暖房完備。定員210。内外ニュース、スポーツニュース、優秀短編映画、漫画を上映。 上映会数は一日8回から10回。入場料は50円。」という記述で締められている。
えッ、“スーパーニュース劇場”ってなによ?
現在74歳のオイラも全く知らない《ニュース劇場》。
ググってみたらありました。
誰もが予想するような、ニュース映画を専門に上映する映画館ではなく、幾本かのニュース映画と短編映画を上映する入場料が廉価な劇場のことをそのように呼んでいたそうである。
通常の映画館の1プログラムが長編の2本立てで3~4時間のところ、ニュース映画館は、短編中心の編成で8~10本並べても1~1.5時間で一巡するというプログラムだったそうなのだ。
鉄道のターミナルに隣接し、時間つぶしや待ち合わせに利用しやすい“ニュースと短編を上映している劇場”ということらしい。
自然と観客の回転率が上がり低料金であってもビジネスとして成立したのだろうね。
「天王寺ステーションシネマ」、開業時はニュース劇場(=ニュース映画館)だったのか。
オイラが知った頃は、すでに“洋画1本立て興行の低料金劇場”だった。
開館して数年後の60年代の終わり頃には、もう転換期が訪れていたんだね。
――地下鉄谷町線の谷町4丁目と天王寺間が開通し、アベノ地下センターが開業したのが、1968年。
だから、きっとそう、その頃には時勢も変化し、娯楽への要求のカタチも変わり、従って劇場の性格も変容していったんだろうね。
でも、人より早く観たいとか、ゆったりと観たいとか、新作か旧作か等々に頓着しなければ、廉価で洋画が一本、ン百円で楽しめる。とにかく、いろいろ観たい映画好きにはありがたい小屋(劇場)だったのだった。
行った際はいつも満員に近いような状態だった。なにしろ席数がしれてるからね(笑)
自分との接点を残しておく。
私が天王寺界隈に足を踏み入れなくなってから40年あまり経過している。
2000年以降も数える程しか天王寺で下車しておらず、下車してもアベ地下に潜ることもなく、当然のことながら、当劇場が2001年に閉館していることも知らなかった。
なにしろ、河内の田舎モンの私にとって、小さな頃からの都会のシンボルだった「天王寺ステーションビル」も今では「天王寺ミオ」といわないと通じないのである。
もっとも、小生の子供たちにいわせると、「今では」って、いつの話してんねん!!!ということになるのだが(笑)…

※1:ステーションシネマの前の階段を降りきり、アベノ地下センターを横切った先にある天王寺公園へ上がる階段「大阪メトロ・地下鉄 天王寺駅 21番出口」の写真。「てんしば」も案内されているので、2015年以降に撮影されたものだろうね。

