観ないで死ねるか、と思わせてくれたガイド本

むか~し、むかし、「ハードボイルドだど」のギャグで人気のあった (’60年代の)人気お笑いトリオ “トリオ・ザ・パンチ” のリーダーにして活字中毒者、面白本書評家兼日本冒険小説協会の設立者&会長であった内藤陳さんの著書のタイトルに『読まずに死ねるか!』というのがあった。
冒険小説への愛がだだ漏れのええ題名やなァ~と思っていた。 

1990年の暮れだったか、とある映画ガイドのMookを買った時に浮かんだコピーが「みやんと(観ないで)、死ねるか!」だった。
Mookの名は『史上最強のシネマバイブル ’91』(主婦と生活社 刊)。

この本はホンマにすごいのだ。
何がすごいって、収録(紹介)作品数1900本もすごいけど、「’91年版私の好きな映画 BEST 100」がすごいのだ。
堅苦しい評論家やしがらみもあるだろうライターの意見は横へおいといて、1万人以上の読者のアンケートを集計した結果を発表しているところ。

「THE GREATEST CINEMA BEST-100」ベスト10を紹介すると、
_第1位:ダイハード、第2位:バック・トゥ・ザ・フューチャー、第3位:ブラックレイン、第4位:ローマの休日、第5位:フィールド・オブ・ドリームス、第6位:レインマン、第7位:インディ・ジョーンズ 最後の聖戦、第8位:風と共に去りぬ、第9位:スタンド・バイ・ミー、第10位:ニュー・シネマ・パラダイス_
である。
’90年時点の映画ファン達の声が現れているね。
ちなみに、おいらの My Favorite Cinemaである『スター・ウォーズ』(現在ではEpisode4/新たなる希望と書かないとダメ?)は35位で、My Favorite Animationである『風の谷のナウシカ』は34位につけている。公開年を考慮したら健闘してると思うね。

この本はホンマにすごいのだ―の2
図版を見ていただくとわかるのだが、隅から隅まで情報がぎっしり。見開きでテーマに沿った10作を紹介、中でも代表的作品を右ページに2コマ分で入れるというピシッとしたレイアウト。
さらに右ページの欄外には、「もう一本!!」と題し惜しくも選にもれた11本目を紹介し、左ページ欄外には「VOICE」と題して(多分、アンケートに記入されていた)鑑賞者の声を収録している。

例えば、129ページの『乱』についてだと、こうなっている。
_あーもう黒澤の美学はまだるこしいったらありゃしない。もっとアップで顔を映してくれたって良いじゃないよ(♀︎・30・会社員)_

当時(’91年)、正直で鋭いコメントやと思ったし、その思いは35年後の今も概ね変わらない。
もちろん、専門的作品紹介も本文ブロック内でしっかりと記されていて
_黒澤流様式美の究極がここにある。…_


ね、両方載せちゃうところがすごいでしょ。まあ、コメント♀︎さんも小生もあまり「様式美」というものが、黒澤流ダイナミズムを愛するほどには、好きではないということなんだけどね。
―にしても、もう、これ一冊で何十時間楽しめるのか、感嘆ものだよね。

この本はホンマにすごいのだ―の3
雑誌扱いのMookの分際(笑)で、私の人生で幾度かあった蔵書大整理の波を乗りきり、また拙宅の書棚の消滅時にもいつの間にか仕事場にテレポートし、サイドワゴンの中やPCデスクの足元に鎮座しているのだ。
今回久しぶりに引っ張り出してみたら、表紙は破れ、中を開くとすっかり黄ばんじゃっていた。
30年も前のMookだから当然のことだけど、傷みとは別に埃っぽいのには閉口した(笑)

で、あれから30年、本書で紹介された映画、全部観たのかといえば、答えはNO。
900本ぐらいは見たかもしれんけど、残り1000本はちょっときついと思われる。
私、まもなくだけど、後期高齢者(笑)
観ないで死ねるか!――この思い、堅持するなら、当分死ねそうにないのだ。