『まんが火山連峰』掘り起こしの旅

当ブログの投稿「巨大山塊、白土三平」のイントロを作文中、
__昔々、コアなマンガファン向けの雑誌がふたつ、「ガロ」と「COM」があった。
__その「COM」の何号目かに『まんが火山連峰』という記事が掲載された。
__作品の傾向や画風、師弟(協力)関係などをサークルの大きさと文字色で分類しラインで結んだ相関図で、当時のマンガ・劇画界全体を見渡すことができるスグレモノだった。
―と書き、筆が止まった。パソコンで打ってるので、キーボードを叩くのが止まる―なんだけどね。

記憶があまりにも茫として漠、それゆえに、できるだけ正確を期したいとネット内をうろついた。
幸い、掲載誌の画像を発見することができ、上の記事も脱稿できた。
だからメデタシ・メデタシなんだけど、タイトルすら〝まんが火山連峰〟と誤って記憶していたし、図説そのものも、記憶とは若干、いや結構かな?違う物だった。

出会った実物、大・中・小の3種の丸(キーになる大山の丸は、黒ベタ・白抜き文字で表されている) で表された比較的フラットな相関図だった。
私の記憶ではもっと入り組んだ図だったように思い込んでいたのだが、当時の私の各作家への思い入れ度合いが記憶に大きく影響していたのだろうね。

「aucfan」で見つけた画像から作った『漫画火山連峰』見開き頁復元画像

で、この際、頭を整理するためにもきちんと記録しておこう、つまり“ぶつくさ”しようと思った。以下はその記録である。

『まんが火山連峰』掘り起こしの旅、まずはネット検索から…

まず『まんが火山連峰』が掲載された「COM」自身のデータを求めて、『COM&まんが火山連峰』をキーワードに検索を開始。
「明治大学 米沢嘉博記念図書館・現代マンガ図書館」というWebsite内で、『伝説の雑誌「COM」 コミックス×コンパニオン×コミュニケーション』()というイベント案内ページを発見。
同ページ内の「会期中2階に展示したCOM・ぐらこんに付けた解説を公開しています。」のリンクを踏んで、『COM解説』()に到着。
同ページ内の「1967年6月号」の紹介文(※1)中に同号掲載を確認。(もうこの記事だけでもお涙物だけど)
続いて、前記案内ページに戻り、展示ボックス-R023の写真に現物が写っていることを確認した。
いにしえファンにとっては、にわかに信じがたい光景なのだが、確かにあった!のだ。


『伝説の雑誌「COM」 コミックス×コンパニオン×コミュニケーション』内の展示ボックス-R023の写真。
サイト「明治大学 米沢嘉博記念図書館・現代マンガ図書館」よりDLさせていただいた。

そうだ!時代は進んだのだ。
マンガの周辺情報も“歴史”として残されている、今は2020年代なんだ!
 期待が一気に膨らんだ。あらためて探してみよう、という気になった。

ネットでキーワード“まんが火山連峰”で画像を検索、「aucfan」の「雑誌COM 掲載 切り抜き 1967…」で文字の読める大きさのスキャン画像を発見、57年ぶりの対面だった。
「掘り起こしの旅」―こうやって文章化するとあっさり到達したような印象かもしれないが、ドンピシャの画像に当たるまで、それなりの時間を費やしたことはいうまでもない。
とはいうものの、何より驚いたのは、いいのかわるいのか、あらゆるもののインデックス化・ラベル化が進行し「こんな細かい情報まであるのん?」といった今日のネット情況だったりする…

さて、白土三平氏への想いがきっかけで始まった『まんが火山連峰』の掘り起こし。
とかくライバル視されることが多かった「ガロ」と「COM」―という当時の状況にあって、『まんが火山連峰』は、周りのノイズに左右されることなく俯瞰・客観的に当時のマンガ界をまとめた貴重な図解・資料であったと思う。
『まんが火山連峰』は、「COM」の創刊6号目(’67年6月号)に掲載された。
その9カ月後、翌’68年の3月号にはマンガ史に残る画期的な論考『コマ画のオリジナルな世界』が「特集:まんがは芸術か?」の主要部分として掲載された。

ふたつの記事の執筆者は、峠あかね。
この詩情あふれる筆名を思いつき・名乗る人は、いったいどんな方なんだろうとず~っと気になった。
峠さんが、柾さんであり、まさきさんであり、真崎さんであることを知るのは、それから1~2年後のことである。

今ではすっかり広まった事実なんだろうけど…

※1:1967年6月号の紹介文……月例新人賞に入選作がなく、ゲスト読み切りもないため、連載以外は巻頭の「漫画・まんが・マンガ・MANGA」のヒサクニヒコとちば・てつやの1Pのコミックストリップ「今日も一日」のみ。「まんが月評」は尾崎秀樹司会のアシスタント座談会「アシスタントとその実情」。アシスタント時代の長谷邦夫や政岡稔也(としや)が出席している。チャートや年表で当時の児童まんが界を俯瞰的にまとめた峠あかね(真崎・守)による特集記事「まんが火山連峰」が非常に資料性が高く、必見である。「ぐら・こん まんが予備校」にはのちに『土佐の一本釣り』などで知られるようになる青柳裕介が初登場、2号に続き岡田史子も再登場している。「まんがと私」で寺山修司がまんが批判めいたことを書いているのも趣深い。連載:手塚治虫『火の鳥』 永島慎二「シリーズ黄色い涙 青春残酷物語 フーテン」 石森章太郎『ファンタジーワールド ジュン』 出崎統『悟空の大冒険』(連載TVマンガ 虫プロ制作のアニメのコミカライズ) 名作劇場:手塚治虫『ハトよ天まで』