愛しのヒーロー達(2)快傑ハリマオ

快傑ハリマオは、私が入れあげた“大人が演じていたヒーロー”の第一号である。
主人公を演じられていた勝木敏之さんがとにかくかっこよくて、ストーリーはそっちのけ、といわないまでも二の次であったことは否めない。

歩き方、走り方、銃の撃ち方、背筋を伸ばし胸をはった立ちポーズ、とにかく、かっこええな~と見とれておったのだ。
以後の長い人生で、私が、こんなカッコエエ大人になりたいと羨望したのは、ジェイムズ・ボンドとスティーブ・マックイーンとクリント・イーストウッドだけなんである。(虚実ごちゃまぜなのは十分承知の上で書いとります)

演じていたのは、勝木敏之という俳優さん。
Wikipediaの記述によれば、俳優座養成所出身で、同期に山崎努さん水野久美さんらがおられると書いてある。真面目で物静かな人、ハリマオの役作りを一生懸命なさっていた、との共演者の証言も紹介されている。その精進が結実し伝説のはまり役となり、小さな町の小学生をしびれさせたのであります。

ハリマオ以後の勝木さん、僕のなかに記憶があるのは、『隠密剣士』の「第三部・忍法伊賀十忍」での伊賀忍者の頭領役が唯一のもので、もっと活躍して欲しかった役者さんの一人である。

『快傑ハリマオ』が放映されていたのは、’60年4月5日 ~ ’61年6月27日まで。
’60年といえば、小生は小学3年で、家にテレビがなく他家に「見せてもらい」に行っていた頃。
社会では、安保反対の嵐が吹き荒れていたものの、結局、6月19日に新安保条約が自然成立し、同月23日には、「日米安保条約」と在日米軍の治外法権を謳った「日米地位協定」が発効した。
大東亜戦争無条件降伏後の日本、俗にいう「戦後日本」にとってまことに重要な年だったのだ。

そんな時、放映されていたのが本作『快傑ハリマオ』。
大東亜戦争直前、マレー半島で大日本帝国陸軍に協力した盗賊団の首領で「マレーのハリマオ」と渾名されていた谷豊という実在の人物がモデル。
ドラマ内の時間も、大東亜戦争直前。主に東南アジアを舞台に、「ハリマオ」とよばれる正義の日本人男性が、現地国家を支配する某国の軍事機関、彼らと結託する死の商人や秘密結社、スパイ団と戦うこの冒険活劇を、敗戦から15年経った当時の大人達はどんな思いで観ていたんだろう?
自分たちが唱えていた大東亜共栄圏の“まぼろし”が昇華され実現される、もう一つの時間舳の出来事を描いているように観ていたんだろうか?
無論、小学生の私には知る由もなかったことだけど…。

作っていた宣弘社もまた、伝説の制作会社。
この雑文のネタ「愛しのヒーロー達」って結局全部、宣弘社作品ちゃうのん?と思えるぐらいたくさん作ってはります。ほんとスゴイ!
ということで、次回は『隠密剣士』のある人について書きたいと思う。