〽風は山から降りてくる レタスのかごをかかえて
唇はくびれていちご 遠い夜の街を越えて来たそうな…
1970年(S45)にヒットした『比叡おろし』の歌い出しだ。
最初に聞いたのは、多分テレビのNHK、ひょっとして『ステージ101』?それともラジオの深夜番組だったか、一聴して気に入った私は、小林啓子さんのシングル盤を買った。
なにこれ、文学的な詞、美しい曲、青年期だった私の叙情ゴコロをおおいに刺激した心に残る一曲なのだ。
あれから55年後の昨日、つまり2025年8月22日、この歌の作詞・作曲者が、あの松岡正剛氏であることを知った。

それは、(笑福亭)鶴瓶ちゃんと上柳昌彦アナ(ウンサー)の掛け合いが楽しい、ニッポン放送のラジオ番組『鹿島Presents 笑福亭鶴瓶 日曜日のそれ』のポッドキャストを聞いていて突然やってきた。(※1)
その日のゲストは、フォークソング界のレジェンド中のレジェンド、小室等氏で、昨年11月に発売された7年ぶりのニューアルバム『lovesong』の話を中心にトークが展開され、間に収録曲がオンエアされるという構成であった。そして、その2曲目に突然『比叡おろし』が登場したのだった。
「こんなの創ったよ」と松岡氏から小室さんが聴かされた時は1番しかなく、小室さんから2番3番をオーダーし完成したという誕生エピソードも紹介された。
当然のことながら同曲を一番最初に歌ったのが小室さんだったことも、私は初めて知った。
ポッドキャストを聴きながら、裏とりではないが、「作詞・作曲:松岡正剛」の文字を求めて『比叡おろし』を検索すると『二木紘三のうた物語』というサイトに出会い、松岡氏が大学生時代の自身の経験、女性への片思いをモチーフに短時間で創った楽曲というエピソードを教えてもらった。さらに小林啓子版では、3番 〽風は今夜も吹いている 死んでは駄目よといいながら さよならは小さなみぞれ「そっと京都の街に」捨てて来たそうなぁ と歌っているのだが、元祖小室等版では「そっと京都の闇に」と歌っていることも紹介されていて、ふたたび驚いた。
この歌、さらに深いものがありそうだ。
こんなおもしろいエピソードが、自分の脇を通りすぎ、55年も知らなかったなんて、今更ながらに情報とか縁とかって、ほんと不思議だねぇと思う。
松岡正剛。
あの「千夜千冊」の方である。編集工学の開祖である。知の巨人の名にふさわしい人である。
その理と知の人が、半世紀前の若き日、文芸的な想いとふるさと京都の気風を溶け込ませ、創った一曲が、これだ。
うちは比叡おろしですねん
あんさんの胸を 雪にしてしまいますえぇ
※1:このポッドキャストは、2025年1月12日放送分の録音版。パソコンにダウンロードして(自動で貯まるのだが)年頭のラジオ番組を真夏に聴いているという状態だよ。
