007 サンダーボール作戦の〝怪〟

James Bond forever 二回目は、59年前に観た『007/サンダーボール作戦』にまつわるお話。
同作がTVで放映されたり、ソフト化されたりするようになった’70年代後半から今日まで、私の中で燻り続けている、いわば年来の〝気になりポイント〟についてのお喋り。さて――

『サンダーボール作戦』は第一作から三作までの世界中での大ヒットをうけ、巨額の予算をぶち込んで製作された大作だ。
だから他のシリーズ作より長尺(時間が長い)。それ故だろうTV放送時やソフト制作時の諸々の事情で、スクリーンサイズ・音楽&音・シーンの有無など、細かな部分が色々と違う多くのバージョンが存在する―とマニアックな007関連コンテンツに書いてある。

私の〝気になりポイント〟は本編が始まって間もなくの〝ミンクの手袋〟―

アバンタイトルの派手なアクションシーンで負傷したボンドは、イギリス南部の保養所で療養する羽目に。ボンドは、理学療法士のパトリシアに〝ミンクの手袋〟で傷めた背中をマッサージしてもらう“治療”を受ける。ボンドは、そこで怪しい男―リッペ伯爵と出会う。
リッペは、自分を訝しがるボンドをある方法で始末しようとする。
それはパトリシアが、“いつもの病気”で彼女にちょっかいを出したボンドへのお仕置きでもある治療法?―ボンドがベルトで固定されている「電動式脊椎牽引装置」を暴走させ、文字通り伸ばしちゃおうというもの。暴走には成功するが、設定した時間より早く戻ってきたパトリシアによってボンドは救出され、計画は失敗する。
タイマー設定をしていたとはいえ、中座した責任を問われると困るという彼女、弱味につけ込む“悪い男”ボンド、二人はそのままシャワー・ルームに入り、湯けむりの中……ややあって、「激しいな」と言いつつ部屋を出るボンド。スチームバス室にリッペ伯爵を発見。
ボンドはリッペをスチームバスの中に閉じ込め、先刻の仕返しに成功する。
その後、部屋に帰りボンドは、再びパトリシアと戯れ、ミンクの手袋でパトリシアを…

っとまあ、初見以来、私はこの流れで療養所のシークエンスを記憶しているのだが、TV放送、レンタルビデオ、レーザーディスク、DVD、観るたびに、なんか違うのだ。
いつしか私はこの箇所を「サンダーボール作戦の怪」と呼ぶようになっていた(笑)

その違いとは、①「パトリシアに〝ミンクの手袋〟で傷めた背中を優しくマッサージしてもらう」シーンはあるのだが、②「パトリシアを〝ミンクの手袋〟で優しく愛撫する」部分がカットされている――場合が多いのだ。
①と②がセットだから面白いのに、観るたびに「ミンクの手袋でパトリシアを…」がない!俺の妄想か?と本作を観るたびに思ってきた。ここ、ハサミ入れやすいのかな~?

中学生の私に「大きくなったら俺も絶対やったるねん!」と決意させた“マッサージごっこ”。きちんと収録されているソフトがない。なんで? 摘むなら、他でしょ。なんで??
ここがカットの対象になっているのがなんとも不満!私ならラストの水中戦闘シーンを1分ほど削ってでも〝ミンクの手袋〟は残す。(あんたはボンド・ガールマニアやからねといわれそうやけど)

『サンダーボール作戦』に絡むプロ&マニアの記事、幾つも読ませていただいた。
当該箇所以外の様々な違いも全て押さえている超マニアもおられ、その辺りの広がりと深~い方々の存在、流石ダブル・オー・セブンと言わずにはおれない。細かい検証の足跡、もう『ブレードランナー』に匹敵しますね。素直に頭が下がります。
それでも「カットされている」との紹介はあるけれど「このバージョンには入っているよ」という記事にはいまだにお目にかかれていない。残念だ。

――と、まあここまで書いて、念のためにと所蔵している「007製作40周年記念限定DVDBOX」の『007/サンダーボール作戦 特別編』を引っ張り出して確認観賞を実施(笑)した。
結果、手袋は〝出た〟のだが、やはり①と②の〝完全セット〟ではなかった。

―ボンドは仕返しに成功。ざまあみろと部屋に帰る。パトリシアをミンクの手袋で愛撫するボンド…

ないと思っていた②「ボンドがパトリシアをミンクの手袋で愛撫する」はあったが、あると思っていた①「パトリシアにミンクの手袋でマッサージしてもらうボンド」の方がないという新たな〝怪〟に出会ってしまった。
だから、ネット上で「ミンクの手袋が唐突にでてくる。なんのこっちゃ」という感想を書いている人もいた。それ、十二分に理解できます。
でも、さすがにそれは無いじゃろう。どっかにミンク出てこんか? ともう一度見直すと、微かにあった。保養所の頭の部分、

―ボンドは理学療法士のパトリシアに治療され横たわっている時、怪しい男と出会う。

鑑賞者の視線は、リッペとボンドのやりとりに誘導されるから、画面の端のパトリシアが〝ミンクの手袋〟をはめていることなど、手袋捜索目的で見ている人間以外、見過ごすほどの大きさだ。この版では、①の「パトリシアに〝ミンクの手袋〟でマッサージしてもらう」シーンがカットされていたという結果になった。これ、映画としてどうなん?と思ってしまうよね。

この「サンダーボール作戦の怪」を解消するには、『007 サンダーボール作戦/1966年:劇場公開・レストア完全版』と銘打って、新たに作り直さないと観れないのかもしれないね。

あっ、また新たな疑問。
2005年12月「40周年記念DVDBOX」の購入時に本作を観ているのだが、その時、私は本件「サンダーボール作戦の怪」の調査をしたのだろうか?していないのだろうか?あるいは本件自体を失念していたのだろうか?
こりゃあ~、

The Thunderball Mystery is Forever

だよね。

__とつぶやきつつ、James Bond forever section 2 ここまで。
次回は、007ポスターの超絶にうまいイラストレーター達のお話を書こうとか思っている。