日本の連続テレビアニメの歴史の幕を開けたのは、’63年の1月1日、虫プロダクション制作の『鉄腕アトム』であったことはすでに書いた。
以後、’65年『W3』『ジャングル大帝』、’66年『新ジャングル大帝 進めレオ!』、’67年『悟空の大冒険』『リボンの騎士』と紡がれた虫プロ作品は、いずれも手塚作品のアニメ化だった。
1968年、いろいろな事情があって手塚原作でない作品が登場する。(※)
それが、江戸川乱歩の『少年探偵団』を元にした『わんぱく探偵団』だった。
内容はさておき、私がビビッドに反応したのは、絵(画)の違いだった。
作画マンたちが意識して年齢層を上げたのか、当時台頭してきた劇画や青年マンガの画調を取り入れたのか、丸っこい児童漫画風のラインが薄まり、直線的なラインの絵に変わっていた。
その理由、私は上の二つに加えて、原画・アニメーターたちが、皆さん“そんな線”で描きたい年頃だったのではないかと思っている。当時の私(高2)がそうだったように…
で、つまりは、気に入ってしまったわけである。
以後、動かし方も含めて、私は「虫プロ調」「虫プロ青年マンガ部」などと命名し、勝手にレッテルを貼り、ひとりごちていた。
『わんぱく探偵団』のスタッフを眺めていると、この「虫プロ調」形成のキーマンだったであろう人たちの名前が満載だ。
制作担当:もり・まさき(真崎・守さんですね)、監督:林重行(りんたろうさんですね)、演出・作画どちらにでも出てくる、りんたろう・出崎統・北野英明・村野守美・杉野明夫…といった方々。ウワォ~、すごいメンバー。
『わんぱく探偵団』は全35話、同年2月から9月の終わりまで放映された。
続く10月からは、『佐武と市捕物控』。
’69年4月からは『どろろ』(途中から『どろろと百鬼丸』・全26話)。絵はかなり原作よりに戻されてるが、百鬼丸には作画監督を担当した北野英明氏の雰囲気が明確に残っている。
’70年4月、『あしたのジョー』(全79話)。総監督・演出:出崎統、作画監督:杉野明夫の最強コンビの極上品、「虫プロ調」画とちばてつやさんの絵が絶妙に混ざった見事な作品となっている。おっと、富野喜幸さんも、演出13回ほど担当しているぞ。…などなど、アニメシリーズも、原作マンガに劣らぬ傑作シリーズとなった。
私の愛したアニメの画、「虫プロ青年マンガ部」の作品は、このあたりまでである。
あれから50年間、多少のブランクを挟みつつもTVアニメを見続けていると、「おっ、今の画」、「えっ、このポーズ」とかで、あの頃が蘇ることがある。
それは、サンライズの『ガンダム・ユニコーン』を観ている時であったり、京アニの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の時であったりする。
私は、好きだった「虫プロ調」が脈々と受け継がれているのを感じ、しばし幸福感に浸るのである。
さて、さらりと流した「虫プロ調」第二作、『佐武と市捕物控』。
同作を語りだすと、またまた、たっぷりとテキスト量が必要。よって稿を分けることにする。
〜「愛する虫プロ調・前編」〜 了
※:今やいっぱい情報が存するので、ことさらここでは書かない。