見える化・可視化・ビジュアライズ、あなたはど~れ?

近頃気になる巷の日本語のシリーズタイトルイメージ

よく使われる似たような言葉が三つ。
「見える化」「可視化」「ビジュアライズ」。

まず、昔からある「可視化」です。その意味(※1)は、
① 見えるようにすること。
② 直接見ることができない事象・情報・関係などを、図表・画像など見ることができる形にすること。

次に「見える化」なんだけど、ここ20~30年で出てきた表現やね。
似たような表現「可視化」がありながら、なお「見える化」を編み出したのには理由があるはず。
ググらずにはおれない性格。さっそく実行してみる…
結果、1988年にトヨタ自動車の岡本渉さんという方が発表した『生産保全活動の実態の見える化』という論文が初まりということが判った。
従業員に対して、伝えたい情報を“視認”させて伝え、次なる行動を促す。その工夫・方法、そして成果・効果を「見える化」と表現したのだそうだ。
「次なるアクションを起こさせるための…」ちゅうとこが、肝なんだね。
“説明のための可視化”ではダメなのだ。

三番目は「ビジュアライズ」。
これはもう単純に「視覚化する」という英単語(※2)
具体的な事象を脳内に思い浮かべることがベーシックな語義だけど、私の属しているデザイン業界、特に「情報デザイン」と呼ばれる分野ー抽象的な概念や複雑な構造の情報を、多くの人に解りやすく伝わる形に落とし込むお仕事ーで頻繁に使われます。
もともと西欧、とくにアメリカを常に崇めている業界ですので、外から来る技術や情報を有り難がって、人より先んじてそれ風の何かをすることと、良い仕事をすることがゴチャゴチャになってる業界ですから、自然とカタカナ言葉がビュンビュン飛び交うんですけれど、注意しなくてはいけない点、ひとつ、アリマス(笑)

「このコンセプト、分かりやすくビジュアライズします」と使っては×(ペケ)なのです。
ビジュアライズ [ visualise , visualize ] は「視覚化する」という動詞。だから、「ビジュアライズ-する」と使うと、「視覚化する-する」となっちゃいます。
よって、[名詞+する]=「視覚化+する」と使うには、visualization を使うことになって、「ビジュアライゼーションする」または「ビジュアリゼーションする」と云わなければならず、滑舌の悪い小生など、噛んでしまいそう。
カタカナことばが好きな業界人が、あまり使わないのも頷けます。
いいにくいものを無理やり使わずに、「このコンセプト、分かりやすく視覚化します」と云った方がよっぽど賢そう…と、思いません?

この頃では、これら三つの使い分けをせず(あるいは同じ意味だと思ってか)、「見える化」一本でテレビで喋ってる方もいたりして、オイオイと思ったりすることがあります。そんな分野で生計を立てている人達こそ、きっちり使い分けて欲しいものですね。

さて、あなたがよく使うのは、どれでしょう?

※1:私のiMacの国語辞典、三省堂の「スーパー大辞林」による。

※2:英和/和英辞典は同じく三省堂の「ウィズダム英和辞典」と「ウィズダム和英辞典」。