1965年の春まだき、「少年キング」の定期購読をはじめた私は、まったく新しいアクション漫画と出会い、魅了された。
「キング」購読の動機は『サイボーグ009』がきっかけだったけれど、もう一本楽しみな連載に出会えて、まことに嬉しかった。
タイトルは『ひみつ探偵JA』(※1)、望月三起也さんのカッコいいシークレットエージェントもの。
’63年の『007は殺しの番号』の世界的大ヒットから始まったスパイ映画のブーム、’65年といえば、その真っ最中―。
本家007シリーズは、4月に第3作『ゴールドフィンガー』、12月には第4作『サンダーボール作戦』が公開され、「007」のパロディーっぽい『電撃フリントシリーズ』(’66ー’67年)やマット・ヘルムシリーズ『サイレンサーシリーズ』(’66~’68年)、その他もろもろが量産され、またTVでも『0011ナポレオンソロ』(’65~70年)のオンエアが始まり、右を見ても左を見てもスパイが闊歩していた、それが1965年―。
そんな中、『ひみつ探偵JA』は大ヒットした。
アクションシーンの描写、巧さ・かっこよさ、何しろ、〝映画よりカッコイイ〟のだ。
豊富な知識によって描かれる銃器の描写の細かさ、正確さ、こんなマンガの画見たことない!と中一生だった私は唸ってしまった、そして、他作品の銃が全て水鉄砲に見えてしまったのだった。
加えてストーリーも外国を舞台にしたスケールの大きなもので、少年マンガの枠を超えていた。
「007」シリーズとの違いは、「お色気シーン」の有無だけだった。だって少年マンガだもん、仕方ないよね。
望月作品との初めての出会いは、その前年、友人宅で手に取った月刊マンガ誌に載っていた『最前線』(※2)だった。
アクションシーンが抜群で、少年は(生意気にも)「この人うまいなあ~」と感嘆し、自身の注目マンガ家リストに即登録したのだった。この時すでに望月アクションは完成の域に達していたんだろうね、きっと。
望月作品とのつき合いはその後も続き、『敵中突破』(’65年/少年ブック)、『ケネディ騎士団(ナイツ)』(’66年/少年ブック)、『日の丸陣太』(’67年/少年サンデー)…そして1969年9月、望月ワールドの頂点を成すあの作品が登場する。
そう、『ワイルド7』である。
’70年代半ばまで「キング」の看板を背負い続けた大傑作にして、ジャパン・アクションコミックの最高峰&金字塔だ。
『最前線』の掲載誌が「少年画報」。『ひみつ探偵JA』そして『ワイルド7』が「少年キング」。いずれも少年画報社の発行だ。
望月先生、少年画報社を背負ってたみたいだね。
さて、’60年代の終わり、青年コミック誌が誕生し、少年誌では控えていた“大人の部分”を皆んなが描くようになった頃、「ヤングコミック」にマイク・ハスラーという外国人名を名乗る作家の『狂い犬(マッドドッグ)シリーズ』という私立探偵物が連載された。
当時は青年マンガ界の勃興期で洋モノ(アメコミ?)の雰囲気を出したかったのか、各誌でアチラ風のペンネームの方の作品が掲載されていたのだ。
M・ハスラー氏の『狂い犬シリーズ』を見た時に、「この人望月三起也そっくりや」とは思ったが、すでに名のある作家が別ネームで描くという遊びゴコロを解さない少年は、「ヤンコミ」の偽プロフィールにすっかり騙されてしまったのだった。
だから、当ブログの別稿「天才・桑田次郎さん」(→)で、25年前の作文と断りつつも、魅力的な女性やお色気シーンを描ける画力のある当時のマンガ家として
――大人漫画界の大家・小島功さん、児童マンガ界では石森章太郎さん、そして桑田さんぐらいだった――
と書いていたりするのである。
恥ずかしながらM・ハスラー=望月三起也と私が確認したのは、自身があまりマンガを読まなくなった時期、反するようにコミックの情報が世間にあふれだした2000年以降だった(笑)
無論、青年マンガだから、上に書いた「007」シリーズとの違いは、初出連載時からすっかり見事に解消されていた事、今さらながらだけれども記録しておきたいと思う。
持って回ったいい方はやめよう。銃も車もかっこいい女も男も、コマ割りも構図も、どれも上手いのだ。
その画力、青年誌に発表の主舞台を移されたキャリア後期の作品群でも衰えることなく、遺憾なく発揮されている。
望月さんは、没後、第45回日本漫画家協会賞の特別賞を受賞された。受賞理由は「独特のコマ割りと格好良さでアクション漫画界に多大な影響を与えた功績」とのことである。
褒め足らない(!)気がしないでもない……
望月三起也さん、たくさんの興奮と痺れる作品群、ありがとうございました。
※1:『ひみつ探偵JA』…少年画報社「週刊少年キング」の’65年1号から’69年34号まで連載された。後に『秘密探偵JA』と改題された。
※2:『最前線』…少年画報社の「少年画報」に’63年(S39)年10月号から’64年8月号まで連載された、第二次大戦時のヨーロッパ戦線で奮闘したアメリカ陸軍の日系二世で編成された442部隊 (よんよんにぶたい)に材をとった戦場マンガ。’65年11月から’71年2月までは「別冊少年キング」に『二世部隊物語』のシリーズタイトルで読み切りもしくは前後編で不定期連載された。