もう10年以上前にはやった言葉に、「 ×× 2.0 」(ほにゃらら にーてんぜろ)というのがあった。物事に変化を起こし次の状態に進める時、あるいはまったく新しい形に進化したと告知したい時などに、端的に示すことができる表現として一時期盛んに使われた。
衆知のように、この言い方、元々は、IT系実業家のティム・オライリーさんが提唱した言葉『Web 2.0』が発祥。ウェブのこれからの使われ方として、04年頃から使われ始め、数年間流行した言葉だ。
オライリーさんの定義では、「送り手から受け手への一方的な流れであった状態が、送り手と受け手が流動化し、誰もがウェブを通して情報を発信できるように変化したウェブを『Web 2.0』とする」であったらしい。
具体的なテクノロジー&サービスの内容としては、ロボット型の検索エンジン、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、ウィキメディアを始めとするウィキ、電子掲示板、ブログなどが挙げられる。旧来の消費者が書き手・情報発信源になって、それらを使っている状態を『Web 2.0』といったわけだけど、明確な技術仕様があったわけではなく、雰囲気だけで語られていたため、もっともらしいが意味が曖昧な言葉―Buzzword〝バズワード〟にひっくるめられてしまい、5~6年の間しか使われなかった。
しかし、これを喜んで使ったのがマーケティングやネットサービス業界で、冒頭の例のように「ほにゃらら」の部分に自分たちの関連語を入れ、後ろに「2.0」をつけて己がサービスの新規性を謳い、果ては政治家までが選挙の際に自身の公約の末尾に2.0をつけて使うに及んで、私をアングリとさせたものだった。
ここまで読んだ方は、筆者は『Web 2.0』を否定的に捉えていると読まれたかもしれないが、実はその反対、「誰もがウェブを通して情報を発信できるように変化したウェブ」というのは、インターネット黎明期から、私がウェブに期待した精神そのもの。だから応援していたのだ。
しかし、『Web 2.0』はバズワードとして葬り去られた。
あれから15年。ウェブ状況はどう進展、ないしは変化したのだろう。
一番最初に普及したブログはちょっと古い自己発信メディアとして存在し、Googleは、検索・マップ・翻訳のすべてを牛耳っただけでなく、動画サイトのYoutubeも買収して巨大企業になり、SNSは、Mixi、Twitter、LINE、FacebookやInstagramなどが出現し、栄枯盛衰を競い合っている今日である。
YoutubeもSNS各種も、出始めの頃こそ、ユーザー作成コンテンツの活発な時期で、市井の人々が発信者として多く投稿し成長してきたが、2020年を過ぎたあたりから行政や企業の公式アカウントが整備され始め、急激にビジネス利用・コマーシャル色が強くなり、それに伴ってチープなコンテンツが減り美麗なコンテンツが増え、結構なことではある。
これを是と捉えるか否と捉えるか、人それぞれだろうけど。
通信環境のスペックは上がり、表示デバイスもPC&スマホと増えたし、扱う情報量は圧倒的に増えた。だけど、俺っちには、別にネットに載せなくてもいい情報を大量に垂れ流しして社会全体で遊んでいるようにしか映らないのだ。
気に入らなければ見なけりゃいいじゃん、といってしまえばそうなんだけど、エネルギーもったいないなぁ~と思ってしまうのだ。
『Web 2.0』の到達点はここだったのだろうか?
『Web 2.0』? そんな言い方、流行ったこともあったね~(なんだか中島みゆきの歌みたい)…とか言いながら、「今は『 Web3.0』や」と、さもススンデルような顔をして、みんなでインターネットを使ってゆくのだろうね。
ついでにWeb業界以外で「 ×× 2.0 」(ほにゃらら にーてんぜろ)を使ってた輩にも問いたい。
お前達の「×× 2.0」は到達できたのか?実現できたのか?…と。
多分、「そんなこと誰も覚えてへんし気にしてへんよ~、今更、目くじら立てなさんな」でお仕舞いなんだろうね。
ほんと、スローガンやキャッチフレーズも使い捨ての世の中、なんだよね……