My favorite JIDAIGEKI on TV ―私のお気に入りTV時代劇―の第二夜は、『天下御免』。
NHKが「痛快時代劇」と肩書きをつけた本作は、総合テレビジョンで1971(S46)年10月8日から1972(S47)年9月29日まで、金曜日夜8時より放映された全46話のテレビ時代劇――なんだけどおいらには「痛快時代劇」という表現ではまだまだいい足りない、オレ流なら、そう、“破天荒大傑作時代劇”なのだ。
今では、伝説のドラマとして広く知られている本作だけれど、映像で確認することは出来ない。
当時、NHKでは本作の収録を2インチVTR規格で行っていたが、テープ代が高価だったため、放映が済めば消去して使い回しをしていたそう。ゆえにNHKには1作も現存していないそうだ。
が、主演の山口崇氏が個人的に録画していた(多分家庭用VTRだろうね)第1回と最終回がNHKに寄贈されており、そちらはNHKアーカイブスの番組公開ライブラリーで確認できる。―ただし、安定した再生が出来なかったため、ビデオカメラでテレビ画面を撮影する形で復元された。また、最終回については最後の10分間が欠落している。―とはWikipediaの記述だ。
だから、「作品の印象程度は確認できる」が正確なところだろうね。
もう記憶の中にしか存在しないのだと思うと残念至極としかいいようがないのだが、詮無いことである。

で、何が破天荒、何処が大傑作と言わしめるのか、自分の思いを記しておこう。
『天下御免』は実在の人物・平賀源内を主人公に、’70年代のニッポンと同様に江戸時代中期・田沼時代に合わせ鏡のように存在した公害や受験戦争といった諸問題を、おもしろ・おかしくかつ真摯に描き出した見事な風刺劇で、早すぎた天才の平賀源内、その監視役兼頭の固い武人・小野右京之介、実在した盗賊・稲葉小僧のトリオが各々のそれぞれのスキルを活かして数々の諸問題・難事件にそれなりの決着をつけてゆく『痛快・時代・現代劇』だったのだ。(※1)
本作は、平均視聴率約30パーセントと大ヒットした。
これって、みんなが支持した、ちゅうことやん。
故に当時の視聴者(ニッポン人)はレベルが高かったとワシは思っている。
令和の視聴者を軽んじるわけではないが、当節ならもっと評価は低い、いや下げられちゃうだろう。
権力者への批判が僅かでも匂えば、「体制批判をテレビでするな」とか「政治的発言をドラマに滑り込ませるな」とか声高に(そちら側擁護のための)政治的発言をSNSで発信する世の中である。(当時のそちら側の人たちはもっと懐が深くて『天下御免』も楽しんで観ていたと思うけどね)
源内を演じた山口崇は、NHK大河ドラマの『源義経』『三姉妹』『天と地と』や、TBS系『肝っ玉かあさん』第1・第2シリーズなどに出演し安定した人気を築いていた時期での主役抜擢。
そして、小野右京之介の林隆三は前年に、ABC系『お荷物小荷物』で右翼かぶれの三男坊、TBS系木下恵介・人間の歌シリーズ『俄』(司馬遼太郎原作)の明石屋万吉で初主演・好演し、稲葉小僧の津坂匡章は木下恵介劇場・木下恵介アワーの『おやじ太鼓』や『兄弟』で線の細い好青年を演じ、と人気実力とも急上昇中の二人で共に「俳優座・花の15期生」だった。(※2)

『グラフNHK』291号(昭和47年6月1日号)表紙
「日本の古本屋」よりDLさせてもらいました
有名なぶっ飛び演出が、長崎遊学から江戸に帰り着いた源内一行が現代の銀座の歩行者天国を歩き、当時の都知事美濃部さんも出演し公害問題を語ったり、時の権力者・田沼意次(演・中谷昇)と源内が、国家とは何か? まず国民(民草・民衆)あっての国家(天下)なのではないかと議論したり、最終回に至り狭い日本はもうごめんと気球に乗ってフランス革命後のパリに脱出してしまうというなんともスーパーな内容で、時代劇でこんな作品が創れるんや~と感嘆・感動し、当時二十歳ごろの多感な青年だった私はどっぷりとハマったものである。
この路線、原作とか脚本家に相当な力量がなければ作品として成立させられない危険物だから、ジャンルと称するほどの本数はなく、小生の知る限り、実質3作品の希少ジャンルである。(※3)
その3作品とは、本作と2年後に放映された『天下堂々』、そして’90年に制作された本作の後日譚『びいどろで候〜長崎屋夢日記』で、作者は、いずれも早坂暁さんだ。
早坂暁さん、『天下御免』『天下堂々』『夢千代日記』『花へんろ』『事件シリーズ』と多くの名作を紡いでくださった、我々「テレビっ子」世代にとって、まことに大恩人の一人なのである。
※1:山口崇氏は2003年の『テレビ50年 もう一度見たい! あのドラマ(NHK・衛星第2)』の中で、「カツラを被った現代劇という感覚だった」と懐古している。
※2:俳優座花の15期生:俳優座養成所に1963年に第15期生として入所した出身者の俗称。
※3:『天下堂々』は、NHK総合テレビジョンで1973(S48)年10月5日から1974(S49)年9月27日まで、金曜日の20時(午後8時)より放映された。全47回。また、よ~く調べてないので大きな事は言えないが、これに続くものとしては、’78年の『浮浪雲』(倉本聡・金子成人脚本、原作・ジョージ秋山)、’96年の三谷幸喜氏の『竜馬におまかせ!』と ’17年の『風雲児たち~蘭学革命(れぼりゅうし)篇~』(原作:みなもと太郎)ぐらいか。いずれも成功したかどうかは別として。

